nichirinまさにこの作品が後の『シェエラザード』に続いたんだろうと思われるような浅田二郎の『日輪の遺産』を、先月読んで大いに震えた。

このテの作品を書かせると、この人の筆力は本当に恐ろしい。
この作品も映画化されたようで、しかもかなりの興業収益をあげた…と何かの記事で読んだ記憶が残る。
確かにこれだけのストーリーを書き上げられたら、よほどの演出下手くそがメガホン取らない限り、よほどのダイコンが演じない限り、見応えのある映画が出来るだろうと思う。(映画の評判が良かったのは、原作の良さに加えて監督や役者さんが素晴らしかったからで、決してヘボ監督&ダイコンの映画とは思っていません)

昨夜、ちょっと知った方が出演してるので、ミュージカル『ひめゆり』を観に行ってきた。あの沖縄戦で320人中224人が悲惨な死を遂げたというひめゆり学徒隊の話しだ。
ミュージカルの方は歌を多用しすぎていて、もう少し台詞を入れればもっともっと感動的な作品になったと思う。でもこの作品、これまでに何度か行われていたらしいから、もともとが極端に台詞の少ないミュージカルなのかもしれない。

さて。
舞台上で少女役を演じる彼女たちの姿を観ていたら、私は再び『日輪の遺産』を思い出していた。
あの作品を読んだのは先月も月初の頃で、あの時の鳥肌が立つような感動の余韻もすっかり消えて無くなっていたのだけれど、戦時下の、しかも共に女学生が主人公ということもあって、脳裏をオーバーラップしてきたのだった。

himeyuriもうすぐ8月6日がやってくる。今年もまた、8月9日がやってくる。
毎年この日が来るたびに、戦争とはまるで縁もなく平和にそして豊かに生きてこられた私にも、重苦しい暑い夏の日となるのだ。
私が生まれるちょっと前に、こんな悲惨な時代があったことを、そしてその激動の時代を父母が生き延びて来れた幸運を、忘れては行けないと思うのだ。いつまでも。



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