「涼しい(であろう)日光国立公園で、パノラマ景色を眺めながら勉強をし、そのついでにゴルフをして温泉につかる……、なんてどう?」とお誘いを受けた。断る理由は無いので喜んで同席させていただいた。
涼しいと予想していた日光は、予想に反して気温も高くそして猛烈な湿度だった。ちっとも涼しくは無かったけれど、東京の蒸し暑さからすれば天国とはいかないまでも有り難かった。
ゴルフをし温泉に浸かり、その翌朝。帰路、東照宮に寄っていくことにした(勉強はどうしたか、って? モチしました!)。

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この日光東照宮。私は小学生の時に林間学校で訪れたのが最初で最後だった。40年近い再訪だ。記憶はすっかり薄らいじゃってて何もかも忘れてしまっていたけど、歩きながらポツポツと記憶が蘇ってくるものもあった。
ひと通り見終わって来た道を戻ると、「ピ~ヒョロロ♪」と笛の音。参道の石畳の上でおじいさんがウグイス笛を売っていた。ご本人の了解は得ていないけれど、きっと顔を覚えている人も多いだろうからご登場してもらっちゃおう。

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実は小学生の時にここに来て、私はこの笛を買った。なんでそんなことだけは鮮明に覚えているかというと、今もまだ家のどこかにこの笛があるのを覚えているからだ。我が愚息1号が生まれ小さかった頃、私が吹いてあげてたからだ。
おじいさんが肩から掛けてる笛が入った箱にかかる説明には“昭和30年から55年 お待ちしていました”と書かれてる。
わたしが生まれる前から、ここで、この笛を売っていたわけだ。つまり小学生だった私は、このおじいさんから買ったということだ! 
その事を話したら、おじいさんは嬉しそうに「そうだよ。それはこの私だ」といろいろ話してくれた。御歳82歳。わたしが笛を買い求めた時は20代だ。

私が小学生のころは、きっと参道の杉の木も今ほど大きくは無かったろう。このおじいさんは目の前を行き交う人々の姿と共に、杉の木の成長も見守ってきたのだ。
世界遺産のこの日光東照宮の石畳の上という、このおじいさんとおじいさんが50年以上も座り続けていたこの場所は、ニホン文化遺産に指定しようと思うわたしなのだった。まだまだ元気で「ピ~ヒョロロ♪」と笛を売り続けて頂きたい。