天童荒太の「家族狩り」を読んだ。
全5巻の長編だが、重いテーマに暗い内容で途中で気が滅入ってきた。滅入ったといっても読むのが嫌になったというのでは無く、人間の嫌な面ばかりが描写されていることで気が滅入ったのだ。通勤途上で読んでいたのだけれど、仕事するのが嫌になったくらいだ(~_~;)

現代社会の歪みを取り上げていて、私自身も意識しているテーマだったので読むことにしたのだけれど、2?3巻あたりは正直、読み進むことが辛く躊躇した。それでも、先を読ませたくさせるあたりは、流石に上手いなぁ。彼の作品は他に「永遠の仔」しか読んでいないけれど、あの時は内容もさることながら構成に驚いた。

今回も似たようなテーマを扱ってはいるけれど、登場人物も多く、それぞれの問題を扱っているのでテーマはもう少し広く、多岐にわたっていた。児童虐待、夫婦問題、教育問題、政治の腐敗や貧富の格差、戦争などを取り上げつつ家庭崩壊を主軸に親子(人間)の絆を描いている。

「永遠の仔」のようなエンディングを期待して最後まで読み切ったけれど、残念ながら期待とは異なった。
「永遠の仔」のエンディングが、ちばてつやの「あしたのジョー」の最終場面だとすれば、「家族狩り」の最終章は、ちばあきおの「キャプテン」といった感じか。
長い物語を読み切った後の充足感は残らなかったけれど、現代社会の問題を見つめ直すには素晴らしい作品だと思う。