かつて近所にちょっと立派な病院があったのだが、いつの間にかそれは区の福祉サービス施設になっていた。昨年、その施設に初めて入った。コロナ・ワクチンの集団接種会場となったからだ。
ワクチン接種を終えて施設を出たら、なんか読みづらい碑があった。

コレ↓
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読みづらいので転記。「茂吉われ院長となりいそしむ 世のもろびとよ知りてくだされよ」と書かれている。この地はかつての〝帝国脳病院〟、のちの〝青山脳病院〟分院(のちに本院になる)があった。この病院の2代目院長が斎藤茂吉(小説内では楡徹吉)で、この小説の作家・北杜夫はその徹吉の子息にあたる。
nireke2北杜夫といえば『どくとるマンボウ』シリーズが一番知られていると思うけど、私は彼の作品を読んだことがなかった。この『楡家の人びと』に我が家近所のことが頻繁に出てくるというので、初めて彼の作品を読んだ次第なのだ。
確かに我が家から徒歩数分の範囲内の事が、それも大正時代初期のころの事が書かれていて、ちょっと興味深く読んだ。疎開先として、かつて登ったことのある長野県の王ケ頭あたりのことが書かれていたのも、なんか嬉しかった。
しかし正直言って淡々と楡家とその親族たちの歴史が書かれているだけで、作品としてはどうだかなぁ~? 第二次世界大戦に突入したあたりからの描写は引き込まれるものがあったけど。
読後、ビビアン・リーの映画『風と共に去りぬ』を思い出しちゃった。
作品内にも出てくるけれど、77年前の今日、3月10日は東京大空襲が始まった日だ。この日からの数日間で東京は焼け野原になったのだった。