ちょこっと本屋に立ち寄り、本屋ご推薦のキャッチコピーに惹かれて手に取った本の冒頭を少し読んだら、「ダイビングをやったことはないけれど、海の底が暗くて閉鎖的な感じの場所でないことは知っている」という記述があって、思わず「そんな事はない! ダイビングやったことないからと嘘八百書くんじゃない!」と、いったいどんな奴がこんなこと書くのかと思わず買い求めてしまった。ayamachi
まんまと敵の術中にはまってしまった

海の中は、確かに元気な珊瑚礁に太陽光が輝いて、それはそれは息を飲むほど綺麗な場所もあるけれど、それはせいぜい太陽光が届く25m程度の水深までで、35mも潜れば届く光はわずかだし、45mも潜れば光はほとんど届かない。透明度が悪くて太陽も隠れていれば、20mだって真っ暗になることもある。

光の届かない海底は、閉鎖的を通り越して拒絶感すら漂っている。
スキューバでなくても、試しに夜の海を一度泳いでみたらいい。シュノーケルでも良いから水中用のライトを照らしながら、夜の海の中を覗いてみたらいい。
中学生の頃、海水浴場でキャンプをし、夜の海に泳ぎ出たことがあった。沖に向かって泳ぎ出し沖へ沖へと向かううちに、なんだか足首を掴まれて海中に引きずり込まれるような恐怖を覚え、慌てて引き返した。岸に灯る明かりに向かって泳ぎながら、「いまここで停電になったら……」なんて考えて、ますます恐怖しそこからがむしゃらに泳いだ記憶が今でも鮮明に残っている。

夜の海が暗いのは当然だが、昼間の海だって決して明るくて開放的なばかりではないのだ。

この本の中身に関しては、「独り暮らしの独身女性はこんなこと考えながら生活してるのか」という興味深い部分もあって、アッという間に読み終えてしまったけれど、結局それだけでストーリー的にも文章的にも私にはイマイチだった。女性が読むなら「出逢いはタイミング」という部分で共感出来るかもしれない。

雑誌の売れ行きが激減していて、いま出版社は大変な状況だと聞き及ぶ。だけど、それは雑誌に限らずすべての出版物が、この本と同程度のレベルに落ちてきてるからだと私は思う。
期待を何度か裏切られれば、いずれ本そのものが手にされなくなり、財布の中身は活字以外の別の消費に流れて行くことに気付いてないのだろうか? 
何度裏切られても、それでも活字が好きな私は、私の期待を滅多に裏切ることのない作家の本を買い求めるか、本棚に仕舞い込んだかつて読んだ本を読み返すのだ。

majuro