実るほどに、頭(こうべ)を垂れる稲穂かな
先日、80歳にしてエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎氏の講演を聴く機会があった。日ごろの怠惰な生活で、1000㍍未満の山すら登るのにヒーコラ言ってる私には、80歳で8848㍍の頂上に立つなんてことは、超人を通り越して異星人の感すら持っていた。それなのに………。
約90分の講演中、彼が話した内容はすべて自分の自慢話だった。対価は支払ってるだろうけど、彼が登頂を果たすためにいったいどれだけの人間の協力が必要だったか。彼の驚異的な記録は、決して彼一人の努力の結果ではない。
彼の口からはとうとうひと言も、陰で働いてくれていた人々への労(ねぎら)いの言葉は無かった。
誰も彼にエベレストに登ってくれなどとは頼んではいないだろう。どれだけの人々の協力があって、どれだけの金を投下したのか知らないけれど、まさに究極のお遊びだ。

私も年間何度もダイビングに行かせてもらってる。金を出し行動してるのはこの私だけれど、それをやらせてもらえる今の境遇や、留守を守ってくれている家族や同僚に感謝を忘れないようにしなくちゃ。あんな不遜な爺さんには絶対になりたくない。