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作者自身のまえがきに、
「(前略)長くはなってしまったが、どうか、このおもしろさに免じて許していただきたい。(中略)
いいなあ。まっさらな状態でこれが読めるなんて。
あなたのことが、ぼくは本当にうらやましい。
作者が本気で読者に嫉妬しているのであります。
」とあって、なんとも凄い自画自賛ぶりだf(^_^;)

この作品を完成するに10年もかかったのだそうだ。
確かに膨大な資料を紐解きながらこれを4巻にまとめるというのは、大変な作業だと思う。
昔のマラソン・ランナーじゃないけど、まさに脱稿後は「自分で自分を誉めてあげたい」心境だったであろうと思う。

私が読んだ過去の書籍の中からベスト10をあげろ、と言われたら、この作家・夢枕獏の『神々の山嶺』が絶対に入るので、この作品もちょと期待して読んだ。

確かに面白かった。作者自身も後書きで書いているように、作者の筆がどんどん走っていくのが手に取るようにわかる作品だった。

それ故に格闘場面はもの凄い迫力で伝わってくるのだけれど、走る筆に任せっきりにしたようなところもあって、構成的にはちょっとなぁ、な箇所もあった。それでも面白くて一気に4巻読了してしまったのだけど。

格闘技の世界、特に日本の伝統的な武術(この作品では柔道)を歴史的に紐解いて小説にしたら、全20巻くらいの大作になってしまうのだろう。

この4巻は“天の巻”となっていて、いつの日かこれに続く“地の巻”を執筆したいと筆者は書いていたけど、是非とも次作に期待したい。

高校時代に同級の柔道部員から、柔道部に入部しないかと誘われたことがあった。

たまたま、体育の授業で柔道を選択したのだけれど、その理由は中学時代に柔道着を買って持っていたので、それを使わないのはもったいない…という単純な理由だった。
中学時代に基礎を習っていたのだから、当然と言えば当然なんだけれど、他の未経験者よりチッとは上手く受け身も投げ技も出来たわけで、それを見た柔道部員が私を勧誘したのだった。

しかしこの小説を読んで、あの時柔道部に入部しなくて本当に良かったと思った。
腕ひしぎ十字固めで肘のじん帯がブチブチと切れる場面など、読んでるこっちの方が気絶しそうなくらい痛そうな描写がてんこ盛りなのだ。