ず?っと昔。
学生時代にオートバイで富士山近辺を走っていたら、目の前に自衛隊のトラックが何台も連なって走行していた。

一台ずつ追い抜いていくと、隊員達が座っている幌付きのトラックの後になった。
幌は上げられていたから、隊員の顔も装備も良く見える。

しばらく後を付いて走っていると、一人の隊員が私にピース・サインを送ってきたので(当時、これはライダーの当たり前の挨拶だった)、こっちもピースを返してローリングを切ってあげた。
(注・ローリングを切る……とは俗に言うジグザグ走行のこと)95deb909.jpg


すると………、先ほどピース・サインを送ってきた隊員が自動小銃を私に向けるではないか! 
まさか実弾が装填されているとは思わなかったけれど、ビックリして慌てて追い越し逃げた。

もしもこんな事が表沙汰になったら大変だろうと思うけれど、この本読んだら少しも驚く事じゃないと知った。

演習中に遭遇したゴルファーとキャディに向けて、7.62?砲の空砲を連射するシーンが出てくるけれど、浅田次郎自身が入隊経験者であるだけに、あり得る話しなんだと実感できる。

浅田氏が隊にいた時代からすでに30年以上経っているけれど、今でも自衛隊の内部はこの本に書かれたまま、何も変わっていないのではないか。(んなワケ、無いか)

一般人がのぞき見る事の出来ない、塀の向こうの異次元のような世界。それが自衛隊なんだろうと思う。
その異次元空間の中で、それぞれの人生を背負った荒くれ&落ちこぼれ達が、人生と共に自分を見つめ直す。
登場人物たちが若々しく初々しくて、そして切ない。

そういえば高校時代。高校を中退した友人が入隊したのにわずか一週間も経たずに戻ってきた。
「戦車って1リッターで×百?しか走らないんだゼ」とか、「オマエ、匍匐(ほふく)前進を2?も出来るか!」とか色んな話しを聞かせてくれたけど、どうやって娑婆に出てこられたのだろう?

本書の中では脱隊、脱柵(脱走)しようとして、おいそれとは出来ないことが書かれていたけど。