ある人から「これ、面白いよ」と戴いたのだけれど、帯に書かれた“帰ろう、俺たちの丘へ。”のコピーで読む気を削がれ、自宅のデスク上で3ヶ月ほど寝ていました。

そのキャッチ・コピーから甘ったるい懐古的青春物語を連想してしまったのです。9dbd7b6b.jpg


この重松清の『カシオペの丘で』を戴いたあとで、私の後輩が彼の『送り火』を絶賛していたので、私も購入し正月の旅の道連れにしました。

こちらは短編集なのですが、なかなか想像力豊かな作品ばかりで文章も読みやすく楽しめました。

机の整理をしようとして『カシオペアの丘で』と『送り火』が同一の作家と気付きました。

早速ページを開いてみました。
読み始めて直ぐにやはりキャッチ・コピー通りの内容だなぁ?、とちょっと止めようかと思いました。
ところが上巻の中に、こんな会話が飛び出してきたのです。

「帰ろう……俊介……じいちゃんと一緒に……帰ろう……」。

この台詞に涙を流してしまいました。ストーリー上では特に涙する場面ではありません。

私は父が他界したときを思い出してしまったのです。霊安室で眠る父に私が言った言葉を思い出してしまったのです。
意識は物語から離れ、父が死んだ日の事が鮮明に思い出されたのです。

そこから止められなくなりました。

それ以降は物語にグイグイ引き込まれて、あっという間に下巻も読み切ってしまいました。
しかも下巻では、今度は物語に引き込まれ何度も泣いてしまいました。

読み進む内に先の展開が推測できるので、涙するほどのものでは無いとは思うのですが、どうも最近、歳のせいか涙もろくなって来ているようです。

それ以上に重松清という作家の筆力が凄いのでしょうね。
物語の展開が、先が判っているのに泣かせてしまう。なんか計算された文章力を感じました。

こんな文章を書けるように私もなりたいものです。そうすれば夢のような印税生活も可能になるかもしれません。(そりゃ無理か^^;)

ちなみにこの物語、ドラマ化したらきっと大ヒットしますよ。どうですか講談社さん、いっそ映画化でもしてみては。