息子が小さい頃に、自分がオートバイで日本を走り回っていた時の話を何度か語り聞かせたことがあった。

4?5万円をバイトで稼ぎ日本一周に出る。基本はすべて野宿で自炊。洗濯物が貯まったり、悪天候の時だけユースホステルに宿泊した。
当時のユースホステルは1泊2食で代金は1000円もしなかった。ガソリンはリッター40円後半?50円台でタバコのハイライトが45円の時代。

途中で資金不足になるとユースホステルや農家に頼み込んで短期のバイトをさせてもらったりもした。

その息子が数年前にオートバイを買いたいと言い出した。
思わず「ウッ…!」の瞬間。

親としては乗せたくは無いのだけれど、自分の放浪話をしてきた手前、ダメとは言えない。

息子は中古のヤマハ中型車を月賦で購入した。そして夏休み、驚いたことに雨合羽や防寒具も持たずに北海道へと旅立って行った。しかも途中で携帯電話を無くし、連絡もままならなくなった。(そういえば私の時代は携帯など無く、家への連絡は3日に1度程度だった)

行く先々で、知り合ったバイク仲間からその無謀さを指摘され、そしてかなり辛い目にも遭ったようだ。その翌年はそれなりの装備をして富山へ旅だっていったようだった。(それでも私には無防備に見えた)

何と無謀で無計画でバカな息子かと呆れたけれど、自分の過去を振り返ってみれば大同小異。私の初ツーリングも仲間と一緒に秩父へ向かい、帰路に台風に遭遇し、直撃の嵐の中を百数十?走って帰ってきた。
雨具は皆、持っていなかった。しかも途中で仲間のバイクが故障してしまった。修理工具を誰も持っていなかった。

自分では普段の息子の起居振る舞いにハラハラの連続だけれど、自分の父も母もきっと同じ思いだったのだろうなぁ。

これから先何年後かには、その愚息も同じ思いをするに違いない。その時、我が愚息はどのような態度を取るのか? 見れるものなら見てみたい。