一昨日、親友の墓参りに行って来た。
彼とは中学以来の大親友で、寝食を共にした仲だった。だが、直腸ガンにやられ30歳の若さでこの世を去った。
彼の命日は6月11日なのだが、彼がこの世を去ったとき、私も入院していて葬儀にかけつけられず、退院後も墓参せずにいた。私の身体は元に戻っていたが、正直あまりのショックに墓に行くことが出来なかった。

その翌年、家の中で何かを感じるようになった。何かが動いているような、何かの気配を頻繁に感じるようになったのだ。ふと気配を感じてそちらを向くと、家内も同じ方向を同時に向く。「何かいるよね?」。決して私だけの錯覚ではなかった。

この気配が数日続いたある日、私は知人にこのことを話した。きっと信じてはもらえないだろうと思っていたら、意外な言葉が返ってきた。「何か不義理はしていない? たとえば親族の墓参りに行っていないとか」。

驚いた。気配を感じ始めたのは彼の命日あたりからだったのだ。
さっそく墓参りをした。すると翌日から“気配”はピタリとなくなった。私が行かないものだから彼の方からやってきていたらしい。

以来、毎年彼の墓参りを欠かしていない。とはいえ今年はすっかり忘れていて、当時の仲間との酒席で彼の話題が出て、思い出した。それでも我が家にあの“気配”は出ていない。彼も一緒に飲んでいたのかもしれない。

例年の墓参りは、彼の命日が梅雨の時期とあって、雨に降られることが多かったのだが今年は32度を超す猛暑だった。線香に火をともす間に汗が滴り落ちてきた。額から流れ出た汗は目にも入ってきて、他人が見たら墓を前に涙を流しているように見えたかもしれない。が、そのような感慨は今は、無い。
でも、彼の分も頑張らねば…と思うことは事実だ。